※本記事は英語でもご覧頂けます:The Importance of Consumer Centric Innovation
ユーロモニターインターナショナルが実施した『ボイス・オブ・ザ・インダストリー: ライフスタイルサーベイ』によると、2021年、世界の企業の43%が、消費者トレンドの査定を自社の戦略策定に組み込んでいると回答している。このことは、より多くの企業がイノベーションの成功のために、積極的に消費者インサイトを得ようとしていることを意味している。
業界にかかわらず、企業は市場のトレンドに対して受動的に反応し、何かが流行した後、「では我社も」という状況に直面してから行動をとることがしばしばある。このような対応では、自社を他社と差別化し、長期的な顧客ロイヤルティを獲得することは難しい。こうした課題や自社ブランドが今後進むべき方向性を考えている企業にとって、解決策は消費者の声に直接耳を傾け、彼らをイノベーション・パイプラインの中心に据えることである。
消費者サーベイ調査のような定量的な手法、そしてオンラインエスノグラフィー(行動観察調査)、ディスカッションボード、自宅訪問といった、より探索的な定性調査手法によって得られる消費者インサイトは、イノベーションのライフサイクルの全てのステージにおいて、進むべき方向性を提示することができる。
基本的なイノベーション・パイプラインと解決すべきカギとなる課題
消費者の声を得ることのメリットは?どのように、どの場面で付加価値をもたらすか?
消費者にとって本当に重要なトレンドを確認、査定し、優先する
イノベーション・パイプラインの初期段階では、焦点領域の特定やアイデアの創出など、しばしば「What's Next? (次に何が来るのか?)」を考える必要がある。時に企業は、あるトレンドが消費者にとってどのような意味を持つのか、あるいはそのトレンドがどのようなものかについて、思い込みを持ってしまうという過ちを犯す。これを避けるべく、消費者の生活に特定のトレンドがどのような影響をもたらしているか、彼らに直接意見を聞くことで、そのトレンドの信憑性や現実に根ざしているかどうかをより正確に知ることができる。企業は、消費者の声を聞くことで、トレンドのニュアンスを理解し、そのトレンドに対する思い込みを捨て、将来のイノベーション創出のためにホワイトスペースや現実的なステップを考えることが可能になる。
消費者の態度、行動、体験に合わせたイノベーションの創出を目指す
企業は、新しいアイデアを生み出すだけでなく、創出されたイノベーションを使ったビジネスの立ち上げという課題に直面することになる。消費者の行動をオンタイムで観察し、彼らの意思決定に耳を傾け、製品やサービスを使用する場面において、彼らにとって何が本当に大切なのかを知ることが正しい決定につながる。企業は、こうしたリアルな消費者行動を重視することで自社製品を実生活にマッチさせ、競争力を維持することができるのである。
すべてのタッチポイントにおいて利便性を意識し、消費者ニーズを反映していることを確認する
イノベーションが製品化されても、その後の発売戦略において、何が消費者を惹きつけ、彼らがいかにして新製品を発見するかが考慮されていないことがよくある。最も効果的な戦略を取るために、製品テストや改良のステージにおいて消費者の意見を仰ぐことで、自社製品が消費者にとって最も手に取りやすい場所や流通チャネル、あるいは実店舗内ではどの区画なのかを考えることができる。消費者がどこでどのように製品を購入するのかを反映した、明確な顧客主導型のカスタマージャーニーマップを作成することが、新製品発売を成功に導く。
鮮度、競争力、柔軟性を保ち、変化し続ける消費者の需要と期待に応える
最後に、優れたイノベーションは、目まぐるしく変化する市場の中にいる消費者に合わせてリニューアル、リフレッシュを繰り返さなければならない。大きな影響力があるイノベーションの多くは、根幹は変わらなくとも、微妙な変化に対応し続ける柔軟性を備えている。イノベーションが製品として発売された後に、改めて消費者に意見を聞くことで、ブランドのマーケティング戦略、パートナーシップ、ブランドアンバサダーの見直しや更新を検討することができ、イノベーションを新鮮に保つことを可能にする。
今日、業界を問わず、徹底的な消費者中心主義を目指す企業・ブランドが増えている。例えば、米国の食料雑貨小売大手Trader Joe's(トレーダー・ジョーズ)は、顧客第一主義を全面に打ち出し、カルト的な人気を博している。同社は、ショッピング体験の簡素化、変化し続ける多種多様な品揃え、優れた顧客サービスなど、あらゆる場面で顧客のことを考えている。
消費者視点を取り入れるのに間違ったタイミングなどない
今後、イノベーション・パイプラインに沿ってプロジェクトを検討する際には、企業は消費者の意見をすでに同プロジェクト内に反映させているか、それともこれから消費者の声を取り入れるのか、ということを常に考える必要がある。そうすることで、消費者が自社のビジネスイノベーション戦略の中心にいることを確認し、成功に近づけることができるだろう。
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(翻訳:横山雅子)