改めて言うまでもなく、消費者は複雑だ。
消費者の行動は多面的で、時には矛盾していることさえある。人々の意図と行動は常に一致しているわけではく、彼らの嗜好が永遠に続くことなどほとんどない。今まさにこの文章を読んでいる貴方も例外ではないだろう。
ユーロモニターインターナショナルは毎年、世界の消費者トレンドTOP10レポートを発表し、企業や団体が戦略を策定する上で理解すべき消費者行動の変化や、根底にある動機を解説している。
顧客の潜在ニーズを先取りし、消費者が抱く悩みを解決するような革新的ソリューションを提供することは、決して容易ではないが、弊社のレポートは、企業のマーケティングキャンペーンや事業計画を策定するうえで大いに役立つだろう。
ここからは、2023年の世界の消費者トレンドTOP10のそれぞれを簡潔に説明していく。各トレンドのより詳細な解説およびケーススタディーは、こちらのレポートをご覧頂きたい。
人間味のあるオートメーション
テクノロジーは我々の生活の至る所に存在し、気づかないうちに組み込まれている。
オートメーションは、自宅の照明から店舗におけるレジ会計まで、我々の周りにあふれている。しかし、ロボットは未だに人間の微妙なニュアンスを出すことはできない。消費者は依然として、人間的な接触や情緒的なつながりを求めている。
有意義なソリューションを提供するためには、人間と機械がうまく協調しなければならない。テクノロジーへの過度な依存は、顧客のブランド離れにつながるおそれがある。
切り詰める消費者
消費者は今日の不安定な経済状況下において、可能な限り切り詰め、支払う金額から最大限のメリットを引き出そうとしている。
現在、最優先事項は節約である。人々は生活必需品に対し、より多くを払うか、または低価格なものに買い替えるか、あるいは全く買わないかの選択を迫られている
買物客はお手頃品を好み、Buy Now, Pay Later(今買って、後で払う)のような柔軟な支払い方法を選んだり、リワードプログラムや限定セールといった特典を活用したりしている。
スクリーンタイムの管理
誰もが皆、TikTokやNetflix、またはお気に入りのオンラインショップを何も考えず、長時間にわたりブラウジングしている自分に気付いたことはあるだろう。
今日、人々はスクリーンタイムを意識的に管理するようになり、使用するアプリやプラットフォームに関しても、より選択的になっている。しかし、これはデジタルデトックスとは意味が異なる。なぜなら人々は、オンライン上での時間を排除しているわけではなく、むしろそれを有効活用しているからである。
最近、アプリを削除または解約、停止した人、または、自身のオンライン活動に費やす時間を意識するようになった人は皆、「スクリーンタイムの管理」トレンドを象徴しているということだ。
エコで経済的
「エコで経済的」と「切り詰める消費者」、そして後述の「今を大切に」トレンドの3つは密接に関係しているが、「エコで経済的」トレンドと他2つとの違いは、コスト意識の高さが、環境に良い影響をもたらすという点である。もう少し詳しく見てみよう。
消費者の中には、かつてほど出費、購買または旅行をしなくなった人々がいる。さらに、生活費危機を受け、消費者はエネルギーを節約し、光熱費を低く抑える方法を模索するようになった。こうしたコスト削減は、消費活動を制限し、廃棄物を減らすことだけでなく、エネルギー効率の高い製品やレンタル品、中古品といった、環境にやさしい代替手段の選択につながっている。
消費の減少とは、つまり、持続可能性の向上を意味するのである。
ゲームの時代
ゲームはもはや大衆娯楽だ。スマホゲームやeスポーツを、初心者から熱狂的ユーザー、ひいてはプロゲーマーまでがプレイしており、各プレイヤー層はあらゆる年代にまでおよんでいる。
ゲーマーたちはバーチャルゲームに没入し、ブランドにとってはそうした熱心な消費者層をターゲットにできる絶好の機会となっていると同時に、より多くの企業やブランドがゲーム広告を展開したり、ゲーム文化に寄り添った製品の開発を進めている。
しかし、今はまだ転換期にすぎない。娯楽および収入源としてのゲーム市場は、ここから更に勢いを増すだろう。
今を大切に
本文の冒頭に、「消費者の行動は時に矛盾している」という旨の記述をした。前掲の「切り詰める消費者」が節約に関するトレンドならば、「今を大切に」は、(賢く)散財することである。
この数年間、世界は永遠に続く危機の中にいるように感じられる。パンデミック、深刻なインフレ、景気後退など、不安材料は枚挙にいとまがない。消費者たちは、その中を生き抜くうえで、大きな犠牲を払ってきた。
2023年、人々は少しだけ人生を楽しもうとしている。財布の中身を気にしながらも、ささやかな贅沢とご褒美を思い切って自分にあげようではないか。皆、頑張ってきたのだから。
戻ってきた日常
外出が戻ってきた。先行きは未だに不透明ではあるが、人々は人生を前に進めようとしている。彼らは今、ロックダウン期間中に外出できなかった自分の時間を取り戻そうとしている。
消費者は現実世界に戻り、正常を取り戻そうとしているが、企業が覚えておくべきは、今日の消費者それぞれが、異なる「正常」の感覚を有していることである。いずれにせよ、人々は自宅外活動を楽しみ、世界を再発見しようとしている。
立ち上がる女性
女性は戦っている。そして、これ以上黙ってはいない。女性の権利を叫ぶ声は、より大きく、より強くなっている。
米国のロー対ウェイド判決の転覆や、イランのマフサ・アミニの死といった不当な出来事の数々が、世界中で人々の怒りを呼び起こした。消費者は女性の平等のために立ち上がり、前向きな変化が起きるまで引き下がるつもりはない。女性の社会的地位向上は、決して無視できない課題である。
無理をしない生き方
人々はもはや燃え尽きポイントを過ぎてしまった。彼らは気力体力を使い果たさずに、何とか日々の職務を遂行したいと考えている。
疲弊した消費者は、歩みを止め、一歩下がり、自分がコントロールできないものは手放している。彼らは頑張り過ぎることをせず、かわりに最適なバランスの中で、自身の力を最大限に発揮しようとしている。
型にはまらない若者たち
このトレンドを牽引するのはZ世代の消費者だ。
彼らは、最も人格が形成される時期にパンデミックを迎えた。デジタルネイティブである彼らは、まさに経済的にも自立しようとしている。型にはまらない育ちの彼らが、今後ビジネスの常識を覆していくだろう。
コンテンツを作り始めたミレニアル世代の後を受け、Z世代はさらにその水準を高めていくだろう。Z世代にとってソーシャルメディアは、自分を表現するための舞台であると同時に、新たな発見をするための検索エンジンであり、お金を稼ぐチャネルでもある。
2023年の主要消費者トレンドを追跡する
以上が2023年、企業が理解すべき世界の消費者トレンドTOP10の要約である。貴社の2023年における投資、決断、成長計画の後押しとなれば幸いだ。消費者トレンドに関するコンテンツはこちらのページに集約してあるので、これらのトレンドを通年でモニターしたい方はブックマークをおすすめする。