Retail and E-Commerce Our experts provide analysis on the retail industry, featuring insights from a local to global level on where and how consumers will shop across both traditional and emerging retail channels.

2023年版 アジア太平洋の急成長小売企業TOP10

9/11/2023
Quan Yao Peh Profile Picture
Quan Yao Peh Bio
Share:

本記事は英語版でもご覧いただけます

2022年、新型コロナウイルスがアジア太平洋地域の小売業界にもたらした影響の大きさは、市場によって大きく異なった。その差は、主に感染状況や封じ込め対策、また感染収束期へのアプローチの仕方によって生じた。

2022年、中国ではロックダウン政策が来店人口を押し下げ、実店舗型の小売売上高は、米ドルベースで4%減少した。一方で、インド(14%増)、インドネシア(10%増)、韓国(4%増)といった市場では、コロナ以前のライフスタイルや社会活動の再開に伴う健全な成長やリベンジ消費が観測された。また、国内、海外旅行の回復が、ファッションや美容専門店、自動販売機といった小売チャネルに恩恵をもたらした。

アジア太平洋地域のEコマースは力強い成長を継続した。背景には、パンデミックに伴い小売業者のデジタル化が進んだことや、新しい消費者習慣の定着がある。同地域内におけるEコマースの発展状況は、国によって大きく異なるため、ブランドや小売業者の間でも、戦略優先事項や取り組み方に違いが表れた。

アジアの新興国では、デジタル化を進める小売業者にとってEコマース・マーケットプレイスが、便利で手軽な選択肢となっている。Daraz、LazadaやTokopediaといったプラットフォームは、使いやすさや取扱商品の幅広さ、定期的なディスカウントなどの理由から、南アジアや東南アジアの消費者に人気だ。

アジアの先進国では、品ぞろえやフルフィルメントの柔軟性など、Eコマースに対する消費者のより高い期待に応えるためのイノベーションに重点が移っている。例えば韓国の新世界(Shinsegae)が展開するSSG.COMでは、Gucci、Ferragamo、Burberry、Montblancといったラグジュアリーブランドのオフィシャルストアを誘致するなど、プレミアム戦略を採っている。また、新世界の競合であるネイバー(Naver)は、CJ Logisticsとともに「Naver Guaranteed Delivery Programme(ネイバー保証の配送プログラム)」を開始した。同プログラムは、韓国国内の90%以上の地域に翌日配送サービスを提供し、消費者の配送への概念を塗り替えている。

imageoso3y.png

 

SNS利用の増加とスマホ浸透率の高まりに後押しされるライブストリーミングコマース、ソーシャルコマース

パンデミック以降のソーシャルメディアの使用率とスマートフォンの浸透率の上昇は、ソーシャルコマースの成長を後押しした。中国には、世界的に人気となったショート動画のTikTokを手掛けるByteDanceが運営する抖音(Douyin=中国版TikTok)がある。小売業者は、同プラットフォームを利用する6億人以上のデイリーユーザの関心や動画の好みと、自らの出品する商品をマッチングさせ、ユーザごとのショッピング体験を提供することができる。

中国オンライン市場においては、ライブストリーミング、プライベートトラフィック、KOL(キーオピニオンリーダー)やKOC(キーオピニオンコンシューマ)もまた、小売業者が消費者にリーチし販売する上で、極めて重要な要素になっている。同様にインドでも、AmazonやFlipkartといった主要なEコマース企業がライブストリーミングのプラットフォームを用意し、ブランドが自らの商品を紹介したり、ユーザとより親密な関係性を築くことを可能にしている。

imagek7z1.png

 

テクノロジーが後押しする体験型小売コンセプトへの移行

パンデミック後の実店舗では、リアル店舗に来る意味を消費者に提示するような新しい店舗コンセプトが見られるようになった。ブランドも実店舗を単にモノを売る場ではなく、消費者がユニークで記憶に残るような購買体験を得られる場として押し出すなど、体験的店舗が注目を集めている。

消費者中心の購買体験を高めるべく、テクノロジーも活用されている。フィリピンのWatsons「グランドストア」では、AIやARが導入され、消費者はそれらを用いて皮膚の状態を分析したり、化粧品をバーチャル体験することで、自身に最も適切な製品を選ぶことができる。

 

コロナ後の小売業界 環境、個人のウェルビーングへの新たな取り組み

新型コロナウイルスによって、人々が生活のペースを緩め、自らの健康やウェルネスを考えるようになったことから、薬局や健康・パーソナルケア専門店の売り上げも伸びている。サステナブル志向の高まりもあり、小売業者は消費者への啓蒙や店舗運営を通じて、環境問題により一層取り組むようになっている。例えば日本のイオングループは、使用電力の100%を再生可能エネルギーで賄う店舗を開店した。同グループでは、2040年までに店舗で排出する二酸化炭素を総量でゼロにするという目標を掲げている。

 

消費者の新たな期待に応えるためのイノベーション

ポストコロナにおけるアジア太平洋地域の小売業界は、依然として競争が激しい。実店舗とオンラインチャネル全体にわたり、消費者の選択肢はかつてなく多い。テクノロジーやオンラインツールは、小売業者と消費者のつながり方や購入の仕方を変え続けている。同地域全体に展開する小売業者は、今までになかった新しい課題に面しているが、それらを新たな商機へと転換できる小売企業が、買物先として消費者に選ばれ続けるだろう。

 

ランキング:2023年版 アジア太平洋の急成長小売企業TOP10

MicrosoftTeams-image.png

 

Sea Ltdはマーケットプレース「Shopee」のハイパーローカライゼーション、価格競争力、豊富な品揃えで2位を獲得

「2023年版 アジア太平洋の急成長小売企業TOP10」の2位にランクしたのはSea Ltdだった。ユーロモニターインターナショナルの小売業界調査によると、2022年、Sea社の小売販売額は430億米ドルに達した。

Sea Ltdのフラッグシップサービス「Shopee」は、アジア太平洋地域の7カ国で展開されているモバイルファーストのECマーケットプレイスだ。Shopeeではサードパーティー業者とブランドの公式オンラインストア(Shopee Mall)の両方が主要カテゴリーの製品を提供している。

Shopeeは、月次セールとスーパーブランドデー(限られたパートナーブランドが特別な割引やプロモーション、限定商品の販売を行う24時間のセール)でよく知られている。また、国ごとにローカライズされたウェブサイトやキャンペーン、また価格競争力や品揃えで差別化を図っている。ShopeeのモバイルアプリではライブストリーミングやShopee Farmといったゲームを展開し、ユーザーエンゲージメントを高めている。

サードパーティーの小売業者にとって、Shopeeは東南アジアや台湾といった市場の消費者にリーチできる魅力的なプラットフォームだ。Shopeeは認知度が高いだけでなく、マーケティングや消費者とのエンゲージメントのためのツールを用いて、販売業者を強力に支援している。Shopeeはまた、消費者からの信頼を高め、同プラットフォームにおける支出を増やすために、フードデリバリーや決済といった小売の隣接領域にも進出している。

 

ポストコロナ時代において積極的に海外展開を進めるニトリ

ニトリは、日本に本拠を持つ家庭用品のリーディングプレイヤーだ。サプライチェーンを垂直統合しており、企画、製造、物流から小売まで、全てのプロセスを自社管理することで、商品の品質確保や外部コストの最小化につなげている。

ニトリはこれまでも、中国大陸や台湾といった海外市場への進出を進めてきた。2022年には、東南アジアに初めて進出し、店舗をマレーシアとシンガポールに構えた。東南アジアでは、順調な経済成長や世帯数の増加により、キッチン周りの家庭用品や家具の着実な成長が見込まれる。ニトリは、断片的ともいえるこの市場に成長の機会を見出している。

ニトリは今年度、海外進出を加速させ、77の店舗を海外へ出店予定だ。その中にはタイやベトナムといった、同社がこれまで20年近くにわたり製造拠点を置いてきた東南アジアの国々も含まれている。

 

より深い洞察については、下記をご覧ください。

弊社の無料ウェビナー「Mastering E-Commerce Growth: How to Win Online Amid Uncertainty」(英語)では、小売の次の販売機会を捉え、オンラインでの販売を伸ばすためのストーリーが語られています。弊社のレポート「World Market for Retail」では、ユーロモニターインターナショナルが特定した、2023年以降のグローバルの小売業界を形作る五つのトレンドが描かれています。

その他の日本語コンテンツはこちらからご覧ください。

(翻訳:大和太郎)

 

 

;