2024年6月14日、梅雨前の30℃を超える日に、「第一回Passportユーザー会」を開催しました。ゲストスピーカーにお迎えしたヤマハ株式会社の濱崎様から、ヤマハ社内でのデータ活用手法とユーロモニターの市場調査データベース「Passport」のベストプラクティス事例をご紹介いただいたのち、参加者の皆さまで交流を深めていただきました。
ヤマハ株式会社 情報システム部 DX戦略グループ 主幹 濱崎 司 (はまさき つかさ)様
Passportユーザー会とは?
Passportのご活用事例として多いのは、経営企画部や海外事業部での海外ビジネスの戦略検討や、R&Dやマーケティング部での海外市場のトレンド把握としての利用です。
Passportは、使いこなすと極めて有用なツールとして活躍しますが、一方で情報量が豊富なため、「使いこなす」までのハードルが高いのも事実です。
ユーザー会の目的は以下の2点でした。
- ベストプラクティス事例からの気づきを得る
Passportを「使いこなされている」ユーザー様をお招きし、実際のベストプラクティスを紹介していただく - ユーザー同士の交流から刺激を受ける
他企業の同じ役割の方と交流することで、抱えている課題や困ったことのあるポイント、それをどう解決したか、などを語り合ったいただく
その中で、ユーザーの皆さんに新しい発見をしたり、何かしらビジネスに還元できる気づきやアイディアを得たり、「同志」と出会ったりしていただきたい、という思いで開催の運びとなりました。今回が初めての開催でしたが、弊社としても、普段聞けない深度でユーザーの皆さんの生の声を伺うことができ、大変に価値のある機会となりました。
本編の前に、参加者9名の事後アンケート結果をご紹介!
今回のイベントは、ユーロモニター東京オフィス史上、初めての試みでしたが、事後アンケートの設問「本日の満足度を教えてください」の結果は、本イベントの企画・運営チームにとって大変嬉しいものでした。小規模な会合でも、なかなか見ることがない、100%「大変満足」です。
アンケート結果が示す通り、元々は第二部の交流会を含め計2時間、17時までの予定だったユーザー会は、自然と第三部の「Q&A延長戦」がはじまり、濱崎様の画面が再びモニターに映し出され、弊社社員も加わって活発な意見交換が行われた結果、18時半まで続いたのでした。
集計を何度見返しても、この結果でした
「これまではPassportのデータをおそるおそる使っていたこともあったが、使い方に自信が持てた」
と、今回のイベントで自身の分析の答え合わせが出来た方や、
「背景や思想を含めて語っていただけて、とても参考になった」
「他のデータとPassportのデータを融合して解釈するのが有効そう」
と新たな気づきを得られた方など、内容は異なれども、何かしらの学び、気づきを提供することができ、Passportを「使いこなす」きっかけを作ることができた会だったと思います。
ご出席者とご挨拶
国内大手の消費財企業から経営企画やマーケティング、海外事業に携わる方々、計9社9名の参加者の皆様に加え、講師のヤマハ株式会社濱崎様が、ユーロモニター東京オフィスに集いました。
はじめに皆様に自己紹介と一言をいただいた場面では、「Passportをもっと活用したい」「活用して海外事業を推し進めたい」という共通のお悩みが聞かれました。これだけの面々がまだ「使いこなしている」と思えていない、それでもご契約いただいている、つまりPassportのポテンシャルを感じていただきながらも、そのポテンシャルを引き出せていないようだ、という状況が浮かび上がりました。
第一部:ベストプラクティスのご紹介
Passport x 他のデータ = Value²
お話の冒頭で、濱崎様からは、「なぜ企業はデータを活用すべきなのか?」のWHYにあたる部分を熱く語って頂きました。
「ヤマハ社は『世界中の人々の心豊かなくらし』の実現を理念の中で掲げており、そのためには、世界中の人々の暮らしを高解像度で理解する事が必要不可欠です。5年、10年先の楽器事業の絵を描く際、ヤマハ社では楽器を購入する消費者の生活が10年後どんな暮らしをしているのか、まず正確にイメージ・予測してからバックキャストでビジネスを考えています。その産業は10年後ないかもしれない。産業の伸びだけで将来を考えるのは、危険なのです」と話されました。
「そもそも」のところから講義が始まりました
10年後の人々の暮らしをイメージする際に、Passportの消費者調査データや所得と支出などのマクロ経済データが活躍しているとのことで、それらの具体的な活用例をご紹介頂きました。
そして、これらのPassportから得られた「所得や支出の傾向、人々の価値観やライフスタイル」のデータをさらに他のデータと掛け合わせることで、意思決定のできる分析を行おう!と強調。他のデータの例として、社内データのほか、検索エンジンやSNSから得られるオルタナティブデータ、また、ウェブサイトのトラフィックデータを挙げられました。それをさらに、マズローの五段階欲求と組み合わせてLTVを考えるというお話もありました。「優れたデータは、他の優れたデータと掛け合わせることでより大きな威力を発揮する」というお言葉が象徴的でした。
みんなのためのデータ
濱崎様のチームでは、ユーロモニターが毎年、世界規模で行っている消費者調査「Lifestyle」の結果を、「国や地域」「収入」「世代」の三つの切り口から自在に比較ができるようにBIツールで加工したダッシュボードを作られています。それを作られた背景や想いを語られる中で、参加者の皆様がしきりに頷いて共感されていた部分がいくつかありました。
- 過剰なデータ精度は必要なく、決断を立てるのに十分な精度があればよい
→ それよりもデータを使って意思決定し、ビジネスを進めることが大事 - データを見たい距離感は部署によっても、担当製品によっても異なる。例えば営業は週次や月次で見たい、商品企画部は十年単位の場合も
→ その中で、全員に知っておいてほしい、ベースとなる消費者意識の知識として「Lifestyle」を活用する - データを使いたがらない人は必ずいる。一方で、使える人は自主的に使ってくれる
→ 全ての人が使えるように、個々人が「ワタクシ事」として捉えてくれるように、『なぜ』消費者データを用意したか、『なぜ』そのデータを使うべきか、を何度も丁寧に説明する
濱崎様の、内容・スライド・話術の三拍子がそろったプレゼン
年齢・収入・教育状況などの人口統計学的属性を示すデモグラフィック(Demographic)という言葉があります。この亜種、あるいは下位分類として、人の価値観や思考・興味やライフスタイルなどの心理学的属性を示すサイコグラフィック(Psychographic)という言葉があることを、筆者はこの場で初めて知りました。デモグラフィック分析には、Passportのマクロの経済・消費者データ「Economies and Consumers」が有用だと知っていましたが、サイコグラフィックは消費者調査のデータ「Lifestyle」が大きな力を発揮できる領域だ!と感じました。他のデータと掛け合わせる、一つの基盤的データとして使っていただくことで、濱崎様が話されていたように大きな威力を発揮しそうです。
第二部:交流会
一通り名刺交換が終わると、場に凪が訪れる交流会もなくはないですが、この日の交流会は、あちこちで賑やかさが続いていました。ユーロモニター社員も交わり、濱崎様の周りはもちろん、他でもいくつも会話の花が咲き、しばらくすると先述の通り、気づけば第三部「Q&A延長戦」が始まっていました。参加者様の持たれていた「Passportをなかなか使いこなせない」という課題に対して、濱崎様の取り組みが様々な発見やヒントを与えたことが目に見えるようにわかる、そんな時間でした。
業務の中で似た悩みや課題を抱えた人というのは、同じ社内でも見つけづらいことがあると思いますが、社外の場でそのような「同志」と出会い、話せた喜びから来る熱気もあったように思います。
軽食とお酒も交えて
謝辞
弊社において(社内で確認できた限りではグローバルでも)初の試みであったユーザー会に、暑いなか足を運びご参加いただいた9社9名の方々、そして何より楽器の街・浜松から本イベントだけのために東京へお越しいただき、見事な資料と話術で最高の満足度に寄与いただいた、ヤマハ株式会社の濱崎様、本当にありがとうございました!
東京タワー、お台場、東京湾を望む東京オフィスにて
参加者と主催者の双方にとって高い満足度を得られた第一回Passportユーザー会。二回目、三回目と開催され、ユーロモニター東京オフィスの新たな文化となっていくことを期待しています。
Passport、消費者サーベイのデータ「Lifestyle」、他のソリューションも含め、ユーロモニターにご関心を持たれた方は、お気軽に弊社東京オフィスまでご連絡ください。
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